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一足早く梅雨入りしたかのような今日この頃、
貴社益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、今回のメルマガは過去物シリーズとして、
松下幸之助氏の『商売心得帖』より、饅頭屋のお話をお届けいたします。
経営の合間に、ご一読頂けましたら幸いです。
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『 商 売 冥 利 』
商売を始めて間もないころ、ある先輩の方から、こんな話を聞きました。
ある町に立派なお菓子屋さんがありました。
そこに、ある日一人の乞食が、まんじゅうを一個買いにきたのです。
しかし、そういったいわばご大家ともいわれるそのお菓子屋さんに、
たとえ一個にしろ乞食がまんじゅうを買いにくるというのは、これは
珍しいことだったのです。
それで、そのお店の小僧さんは、まんじゅうを一個包んだのですが、
なにぶん相手が相手なだけに、ちょっと渡すのを躊躇しました。
すると、そこのお店のご主人が声をかけたのです。
「ちょいとお待ち、それは私がお渡ししよう」
そういって、そのまんじゅうの包みを自分で乞食に渡し、代金を受け
取ると「まことにありがとうございます」といって深ぶかと頭をさげたのです。
乞食が出ていったあとで、その小僧さんは不思議そうにたずねました。
「これまでどんなお客様が見えても、ご主人がご自分でわざわざお渡しに
なったことはなかったように思います。いつも私どもか番頭さんがお渡ししておりました。
今日はどうしてご主人ご自身があんな乞食にお渡しになったのですか」
そうすると、ご主人はこう答えたのです。
「お前が不思議に思うのももっともだが、よう覚えておきや。
これが商売冥利というものなのだ。
なるほど、いつもうちの店をごひいきにしてくださるお客様はたしかにありがたい、
大切にせねばならん。しかし、今日の人の場合はまたちがう」
「どうちがうのですか」
「いつものお客様はみなお金のある立派な人や。
だからうちのこの店にこられても不思議はない。
だが、あの人は、いっぺんこのうちのまんじゅうを食べてみたいということで、
自分が持っている一銭か二銭のいわばなけなしの全財産をはたいて買うてくださった。
こんなありがたいことはないではないか。そのお客様に対しては、主人の私みずからが
これをさしあげるのが当然だ。
それが商売人の道というものだ」
これだけの話ですが、何十年かたった今でもハッキリ頭の中に残っています。
そして、このようなところに商売人としての感激を味わうのが、本当の姿ではないか
という気がしているのです。
~松下幸之助著「商売心得帖」より~
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今度とも宜しくお願い申し上げます。
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